粕漬けの魚は生で食べられる?

お魚をいただくとなると、やっぱりお刺身が好きで
お刺身でいただくなら、より鮮度がいいものが良い!
って、思ってしまう。

わたしの場合、好きで釣りをしていたこともあって、
漁れたてのお魚をその場で捌く、
あの死後硬直直後のブリブリの身がたまらなく好きだったから
とにかく鮮度のいいお魚しか食べたくない!って思ってきたんだよね。

だけど、かくかくしかじか、いろいろあって、
最近は、「魚の熟成」を考えるようになったの。

何をするって、昆布締めにしたり、
身にキッチンペーパーを当てて酸化させないようにしながら
1週間くらい冷蔵庫の奥に寝かせておくだけ、
なんだけどね(笑

それが、鮮度のいいお魚は、
たしかに爽やかな香りと味が広がって美味しいんだけど、
寝かせると水分が抜けるからモッチリ、ムッチリした食感になって
脂が全体にまわるのか、甘みと旨味が増していくんだよね。
そしてなにより、お鮨やお酒との相性が最高…!

で、ふと思ったの。
これだけ寝かせておいても生で食べられるじゃない?
そもそも魚が腐ってたら焼いたって食べられないじゃない?
塩鯖を使ってしめ鯖を作る地域もあるじゃない?
かぶらずしだって、ふなずしだってあるじゃない?

つまり…、
粕漬けとか味噌漬けって焼いて食べるもの、だと思ってたけど
もしかして生で食べられるんじゃない?

ってことで、ハイ、自分を被験体に実験しました。

被験品は、鮮魚コーナーに転がっていたイサキさん。
 

 
これを、味噌と酒粕で漬けてみます。
お味噌は、手元にあった信州味噌。
(西京白味噌にすればよかった!と思いつつ、美味しかったら次回…
酒粕は、スーパーに売っていた適当な酒粕です。

イサキは、お刺身にできる状態まできれいにします。

 

test 1. 酒粕オンリー

酒粕が直接身にあたらないように、
キッチンペーパで覆い、その上から酒粕を塗ってみました。

 

test 2. 味噌+酒粕

ひと言でいえば、みそっかす…!(悪口じゃないよ!
みそっかすといえど、
味噌と酒粕合わせたのでお魚漬けると最高に美味しいよね〜〜!!!

これは、キッチンペーパーを介したものとの比較で、
身に直接塗ってみました。
これにより、2種類の漬物で、おおまかに4種類試験できることになる、のかな?
①酒粕
②味噌+酒粕
③キッチンペーパーで覆って塗布
④直接塗布
 

 
こんな感じにラップでピッチリ巻いて冷蔵庫の奥に寝かせます。
今回は、日毎に中の状態を確認したいのでラップにしていますが
うまくいった暁には、真空パックで寝かせたいところですb
 

 

寄り道:貝の昆布締め

さて、イサキを冷蔵庫に寝かせたところで、
一昨日から昆布締めしていた、赤貝と北寄貝をいただきます♡
 

 
貝は、寝かせて大丈夫かな…って怖かったんだけど
昆布の旨味と、貝の旨味が相まって、とても濃厚。
北寄は旨味と甘みがより強くなって、
赤貝はヘモグロビンが柔らかくなって甘みが増した感じ?

開けたてもいいけど、これ、好きです。
次回は、もうちょっと長く熟成させてみよう…
 

<1日目>

話は戻り、イサキの粕漬けとみそっかす漬け。

イサキの粕漬け 1日目
イサキの味噌粕漬け 1日目

 
1日漬けるだけで、水分がだいぶ出ています。
両方とも身がねっとりしてるんだけど、
粕(キッチンペーパーあり)のほうが切りやすい。
みそっかす(直)は、身がねっとりしていて、包丁にまとわりつきます。
 

 
左が酒粕オンリー、右がみそっかす。
味は、断然みそっかす。
塩っけがあるからね…!
粕もお醤油に付けていただくと、一気に香りと旨味が広がって美味しいです。

ただ、両者ともに言えるのが、
粕じゃなくて糀で漬けたほうが、たぶんもっと美味しいな、という印象です。
 

<6日目>

 
両方ともかなり熟れたかんじ。
酒粕は、張りがありながらねっとり、粕の風味がより強く。
やっぱりお醤油かお塩をつけていただきたいかんじ。
 

みて!この飴色!
味噌粕は、さらにヌッタリネッタリで切りづらいけど、
舌触りがとてもまろやか!
お味噌の塩気が効いているので、そのままでも美味しい♡
 
 

まとめ

「粕漬けの魚は生で食べられる?」
という疑問については、
「わたしは、美味しくいただけた」という答え。

一般的に焼きが広まっているのは、
その方が美味しいから、というのと、
腐敗まで至っていないものの雑菌はきっと増えているだろうから、
免疫力が下がっていたり、熟れに知識がない人に可食とした場合、
大変なことになる、からかな?

ちなみに、酒粕も悪くはないけれど、
刺身ではなく肴としての美味しさを目指すなら、
糀とか糀+味噌とかにしたほうが
麹菌がより活発に熟成へと導いてくれるかな?という気がしました。

そのまま漬け地ごといただかないのであれば、
キッチンペーパーを介したほうが、
ペラっとめくったらそのまま切れるので具合がよさそうです。

食べやすく切っておいて、混ぜて熟れさせても、よさそう!!
(思ってみたら、そういう瓶詰め、あるね…!
 
 

熟れへの挑戦

「熟れ」と「腐敗」って同じ原理で、
空気中やモノには、
人の体に害を及ばさない菌と、害を及ぼす毒を生成する雑菌がいて
前者が育てば熟れ(発酵)になって、後者が育てば腐敗になって、
何もしなければ雑菌の方が優勢だから、
その辺に食べ物をおいておくと、腐る、わけだよね。
さて、放っておけば自動的に腐敗する食べ物を
腐敗させずに熟れへと導くためにはどうするか?といえば、
雑菌の力を減退させる、
または害のない菌をどれだけ増やせるかに、かかってくるわけです。
(たぶん。

たとえば、ザワークラウトといえば発酵食品でよくとりあげられるけど
この中で何がおこっているかというと、
空気中の乳酸菌をキャベツの中で増やして自軍を固めて、
雑菌からの侵略を防ぐっていう
タワーディフェンスゲームがおこなわれているんだよね。
つまり…、
配備が弱ければ「ゲームオーバー(腐敗)」!

キャベツと塩(2%)のみで乳酸菌発酵させてつくる、ザワークラウト

 
1日、2日目あたりは、雑菌との攻防戦が繰り広げられているのか
ほんと、生ゴミみたいな臭いがするから、
コレ、だいじょうぶかな…?!って毎回思う。

だからこそ?すごく楽しい。

さてさて、そんな腐敗と表裏一体の「熟れ」。

菌による食中毒で死者が出ているケースもあるから、
実は毎回怖いな…って思いながら挑戦してるんだけど、
たぶん、そういうケースって、菌は大量に付着してるんだけど
モノを変質させるまでの時間が経っていない、
つまり、モノも菌もとてもフレッシュだから、
口にしてもわからなくて嚥下・消化まで至って体に害を及ぼしてしまう、
ってことなんだと思うんだよね。

だから、魚を生でいただく場合は、
きちんとウロコを剥がして流水する、とか
内臓を身にふれさせない、とか、をして菌の数を極力減らして、
お刺身という形でいただいているわけだと。

そう考えてみると、熟れさせようとしているかぎり、
保存を継続させている(フレッシュではない)わけで、
時間経過とともに腐敗か熟成どちらかは必ず進んでいるはずだから
時間が経てば経つほど菌の分解によるモノの変質が進んで
味覚による判断がしやすくなると思うんだよね。
(あくまでも、わたしの推測ね!

口にして美味しかったら、防衛成功、わーい!
不味かったら、敗退、ペッペ!(吐き出す

また話が飛んじゃうけど、
刺身を酢飯の上に乗せていただく「鮨」といえば江戸で生まれたものだよね。
で、江戸前鮨といえば「仕事をしている」つまり、
ただ切っただけの刺身は乗せないのが定番でしょ?
シビの塩漬けにはじまり、熟れたものを乗せていた、というのは、
時間経過が食品衛生のバロメーターになるってことを
下痢嘔吐の経験から導き出したんじゃないかな?って、ふと思う。

(話はもどり…
なので、
まずは清潔に処理して、
新たな雑菌が付着しないようにしっかり密閉し、
温度変化が少なく、菌が活発にならない冷蔵庫の奥で
1週間ほどお眠りいただくようにしています。

まさに、冷蔵庫の奥で眠っている状態は、シュレディンガーの猫!
もとい、シュレディンガーの魚!
この、腐敗と熟れが同時に存在している時間が、なんとも楽しい。 

体に異変が起きた際には、衛生管理がなっていなかったと反省し
お魚熟成を観察する今日この頃です。

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