透き通った鯉こく

鯉をいただく①|「洗い」と「透き通った鯉こく」「皮の松笠揚げ」

さて、先月定期で実家に帰ったタイミングで
見学に行った際に捌いてもらった「鯉」。

まずは、オーソドックスにいただくために、
半身は洗い用
半身は鯉こく用に磨いてもらったので、
それぞれ仕込んでいこうと思います。

 

鯉の洗い

魚は、締めたあと4〜10時間ほどで死後硬直が始まり、
わたしたちが口にしているお刺身は、
硬直が溶けた後のものがほとんど。

洗いは、この死後硬直を利用した調理法で、
死後硬直前のお魚を氷水にさらすことで死後硬直を起こさせ、
プリプリとかシャキシャキした食感を楽しみます♪

近世風俗志の刺身の項では、
「洗ひと云うあり。作り身、刺身の類を冷水にて洗ひ食す。これは江戸も不列に盛る。あらひには鱸を好しとす。また鯉の刺身も洗ふ。…洗ひは夏用なり」
ということなので、
鯉の洗いは、鱸の次にくるくらいメジャーだったことが伺えます。
 
切った鯉を氷水にさらすだけですが、
お店のお父さんが言うには、
手を入れて熱いと思う温度(45度くらい?)で一旦さらし、
それから氷水に入れた方が、よりシャッキリするのだそうです。

かなり分厚めに切ってくださったので、食感がすごい…!
骨もなかなかの食べ応えw
 


一般的には酢味噌でいただくことの多い洗いですが
あまりにも清涼感たっぷりだったので
山葵と濃口醤油でいただきます。

食べると、体全体で清流を浴びるかのような爽やかな甘みが広がって、
後から、脂の旨味パンチが押し寄せてくる、
そんな感じ。
本朝食鑑に「魚類の長」と書かれているとおり、
ほんとに、とても美味しい。

そして、身も美しい。 

「鯉をいただきました。川魚特有の泥臭さがあるので酢味噌でいただきます。臭みはあるものの美味しいです」

こういう書き込みをよく見かけるけれど、
鯉は泥臭いものだという先入観で食べる保守的タイプ、
もしくは、良質な鯉に出会っていない、
または、泥臭さが何かがわかっていない、
のだと思う。

鯉を捌くとわかるけど、
泥臭さではなく清涼感がただようだけで、
海の魚のほうがよっぽど臭い(つД`)

 

透き通った鯉こく

「鯉こく」って聞くとどんなものを思い浮かべる?
きっと、ドロっと濁ったお味噌汁に、
身が固そうな輪切りの鯉がドーンと置かれているイメージ、じゃない?

長野県の松本から上高地に向かう途中に
「坂巻温泉」というお宿があって
そこのお夕飯で出てきたのが「透き通った鯉こく」。

これ、お味噌で炊いてるんですか?と聞くと
自家製の味噌で炊いてるって話で、
次の日の朝食のお味噌汁も、透き通っていたの。

後にこれが(推測するに)、本朝食鑑に書かれている
蕎麦汁の作り方に倣ったものなんじゃないか?ってことになるんだけど、
これが、鯉を捌きたい思いをさらに強くしたきっかけになりましたb

そんな、坂巻温泉の「透き通った鯉こく」を再現していきます!
 

<材料>
鯉 半身(内臓、アラ)
生姜 少々

<煮汁>
味噌 大さじ2
水 360cc
酒 180cc
茅乃舎減塩出汁 1パック(または、かつお節30g)
(味の調整で、濃口醤油、砂糖

※味噌を酒と水に溶き、しばらく置いてからこします。
濾したものに出汁パックを入れ、30分ほど、ふつふつと煮出します。
これが、本朝食鑑での蕎麦汁の地で、
糀が多いお味噌だとお味噌だけで甘味が補えます。

味噌が辛く、甘みが足りない場合は、砂糖で調整。
(味醂で炊くと、ふんわり仕上がりません。 

使うのは、皮付きの鯉と、アラと、内臓。
これらを、ブツ切りにしておきます。

初めての鯉こくなので、海のお魚のアラ炊きをするのと同じように、いったん湯引きしてみました。

用意しておいた煮汁を鍋に入れ、水で濃度を調整します。そこに鯉と生姜を入れ、落とし蓋をして火をつけ、アクを取る以外は煮立たせずに10分ほどでサっと炊きあげます。

 
はい、これが、坂巻温泉風、本朝食鑑の蕎麦汁を応用した「鯉こく」で、
この数年、わたしが勉強してきた成果です!

さっぱり、フンワリ♡
小骨は確かにきになるけれど、
骨のない魚なんて、骨のない人間と一緒じゃない?
単純に、つまらないのだ。

とくにお酒を飲んでいると、手作業ができるから悪くない。
もっといえば、こういうことを楽しめる人と、お酒が飲みたいですね〜♪

川魚店のお父さんが捌いてくれたので、ちょっと見た目が無骨だけど、
背骨と中骨を落として、もう少し小さく切って炊いたら
もっと美味しそうに見えると思う。

第一印象ってダイジよね。

今は、とにかく端から鯉と対峙中なので、
いつか、初めて鯉を見る方のために、作り直しをしたいですb

それまでは、ひとまずコレで。

 

皮の松笠揚げ

お父さん、すごい。
鯉こく用は鱗をとるので、
洗いにする半身もウロコを取ってしまって構わないはずなのに
洗いにする半身は、鱗をつけたまま皮を引いてくださって、
「これに、塩胡椒などをして片栗粉を付けて揚げると、美味しいですよ」
といって皮も一緒にくださったの。

一見の、それも見ず知らずの、
たった1回で終わるかもしれない興味本位の人間かもしれないのに、
その1回の、1尾の鯉に、
鯉すべてをいただく方法を詰め込んでくださったんだよね。

胸がきゅ〜んと熱くなってしまう。
きっと1回じゃ終わらせないぞ!って思う瞬間。
 

後々、新聞で知るのだけど、
このお父さん、もともとはカメラメーカーに勤めていて、
結婚後に、奥さまの実家の川魚店を継がれたんですって。
「先代の仕事を見よう見まねで学び、調理の腕を磨いた」
だからなんだ、と納得。

カメラに川魚。
わたしは、カメラに料理。

もっとお話ししてみたいな。
 

鱗付きで引いた皮を、食べやすい大きさに切ります。

塩胡椒をして片栗粉を打つ…
ということでしたが、純粋な皮の味もいただきたくて、塩胡椒と素の2種類でいきます。

鍋が汚いのはご勘弁を…
油を使うと、すぐ汚くなっちゃうんだよね;;

ウロコが立って、カラっとしたら上げます。

 
ウロコが大きくて薄いから、
パリッパリとした食べ応えが満載でビールに合う!
少しスンっと尖ったような香りが、またイイ!

塩胡椒は、居酒屋の味。
素で揚げたあと塩パラパラは、小料理屋の味。
ってかんじ。
タイプがぜんぜん変わるから面白い。

松笠というと、
お魚屋さんからいただいてきた金目鯛の切り身をそのまま蒸して、
蓋を開けたらブワァ〜〜ッとウロコが立っていて、
つい悲鳴をあげてしまったのを、毎回思い出す。

蒸したウロコは今でもちょっと気持ち悪いって思うけど、
ウロコを使ったお料理を「松笠」と呼ぶのだと、
この蒸した金目で学んだのよね。

できれば、口に残らない、揚げか焼きでいただきたい…w
 

あぁ…♡
それにしても、鯉ってこんなに美味しかったのね!
ここまで美味しいとは思ってもみなかったです。

さて、来月は自分で捌くよ!!!
 

ごちそうさまでした♪