ホヤとトマトの冷製蕎麦

もともと夏は暑いものだけれど、
それにしても、わたしが東京に出てきたころにくらべると
「熱い」と書きたいくらいの暑さだったり、
バケツひっくりかえしたみたいなスコール級の雨が降るようになったよね。

まるでラピュタの竜の巣のような巨大な積乱雲を見ては
きっと、地上の温かい空気と、上空の冷たい空気が
洗濯機みたいな勢いで対流しているんだろうな〜…(´-`).。oO
なんて想像をしては、地球の仕組みに興奮してしまう。

小さいころにこの雨に接していたら、
積極的に大粒のシャワーに向かって飛び込んで行ったはず。

その興奮の源こそが、この暑さなのだけど、
タクラマカン砂漠の40℃を越す乾いた暑さに比べると、
この湿気をたっぷり含んだ暑さには耐え難いものがあり、
なにやら冷たくツルツルしたものを
常に、エニータイム、体に取り込んでいたくなるのです。

うどん、素麺、ひやむぎ、きしめん、冷麺、蕎麦、パスタ…。

実は、世界的に見て「冷たい麺料理」があるのは日本だけなんだって。

例えば、夏の定番料理にもなってきた、冷製パスタ。
この冷たいパスタは生まれ故郷のイタリアには存在しておらず、
その発祥は諸説あるみたいだけど、
1970年代、イタリア人シェフが来日して、
ざるそばにインスピレーションを受けて作ったとかなんとか?
冷たいパスタが生まれたのは、極近年のお話。
 

さて、
先日、Instagramで仲良くしてくださっている方が、
天使の髪と呼ばれる「カッペリーニ」という極細のパスタを使った
生ハムとマンゴーの冷製パスタを投稿していました。
触発されますよね?

久しぶりにパスタ、食べたいな…(´-`).。oO

そんな思いに駆られて、ちょうど買ってきたばかりのホヤがあったので
これと、ベランダで育てているミニトマトを使って
ホヤとトマトの冷製パスタでも作ろう、と仕込み始めてはみたのですが、
パスタは炭水バケモノの権化みたいなものだからなぁ…
なんて、いつものようにグネグネ悩み始めてしまい。
ふと。

わたしには、蕎麦があるじゃないか!

パスタのタンパク質量は100gあたり5gに対して、蕎麦は10g。
でんぷん(炭水化物)が軟消化性なので血糖値が上がりにくく、
夏バテ防止になるビタミンB1、
代謝を促しお肌を守ってくれるビタミンB2をはじめ、
肝臓の働きをよくするコリン、血液サラサラのルチンが豊富!

手打ち蕎麦をあれやこれや手を加えてザル以外で頂くのは
蕎麦への冒涜だと思っているけれど、
自分の手打ちで洒落っ気めいたお蕎麦は作ったことがないうえ、

麺的な炭水バケモノを摂るならせめて、
「蕎麦」でしょ?
 
と、簡単に思い立ったものの、蕎麦にも種類が多数ありまして。

いまウチには、8種類のそば粉があり、
はてさて、どれを選んだものか…?

うち北海道産の3種はあまり好みではなかったので、
選択肢としては、
八ヶ岳産の玄ソバを使用している
高山製粉の「玄挽」「白樺」「黒曜」「夢玄」「手挽メッシュ」。

玄挽は、玄ソバの粗挽きで、ホヤと喧嘩しそうなので却下。
白樺は、丸抜きの優しいお粉で、線が細すぎるので却下。
手挽メッシュは、ブレンドを考え始めたらキリがないので却下。

となると、残るは夢玄と黒曜。

夢玄は、丸抜きの粗挽きで、
白い麺に白い星が飛び、綺麗で甘さが際立つお蕎麦。

黒曜は、まだ打ったことがなく、
丸抜きと玄ソバのブレンド製粉だというので
丸抜きに、殻の香ばしさが加わった感じかな?と想像できます。
お粉のさわり心地は、空気を含んだ綿ようにフワッフワ。

ひとまず、この2種を打って検討してみることにしました。
 

丸抜きの粗挽き製粉「夢玄」

粗挽きも粗挽き、フルイにかけると粗い蕎麦が残るくらい。
フルイにかけたら、フルイに残ったものも入れて、軽く混ぜて打っていきます。

玄ソバと丸抜きのブレンド製粉「黒曜」

香りの強い玄ソバの殻と、甘みの強い丸抜きの、触感的にはキメの細かいそば粉。
空気を含んだ綿のような軽さを、肌に感じます。

伸した「夢玄」

粗挽きらしい岩みたいな肌に、白い星が飛んでいます。

伸した「黒曜」

滑らかな肌に、黒い星が飛んでいます。

麺状にした「夢玄」

粗挽きは、なんとかつながっている感が見えてデリケート

麺状にした「黒曜」

ハリがあってしなやか

茹でた「夢玄」

白めの麺に、星が飛んでいて、細挽き感タップリ。

茹でた「黒曜」

黒めの麺に、黒い星が飛んでいて、ハリ感もみえます。

 
茹で上がりを、ゾゾゾゾっと頂いてみると…

「夢玄」はとにかく甘く、モチモチ。
「黒曜」は、香りがよくハリもあるモチモチとした食感。
大好きな「玄挽」から強いソバの香りと、プリプリ感が取れた感じ、というのか。
上品な田舎蕎麦?

ホヤの甘さを考えると…
「夢玄」よりも、「黒曜」かな?

ん〜〜♡
このまますべて茹でて食べてしまいたいけれれど、
ガマンガマン。

さて、使うお蕎麦が決まったところで
ホヤとトマトの具材から、改めていってみましょうか。
 

海鞘と蕃茄の冷製蕎麦

<材料(1人分)>
・ホヤ(大) 1粒
・ニンニク 1カケ
・オリーブオイル タラ〜リ
・唐辛子 お好みで
– – – – –
・ミディトマト 適量
・白ワインビネガー 適量
・塩 適量
– – – – –
・辛み大根 1/3本
・大葉 4枚ほど
・黒胡椒 粗挽き(できれば削り立て)
・薄出汁(出汁、酒、味醂、薄口、塩)→蕎麦汁
 

熱したフライパンにオリーブオイルと、みじん切りにしたニンニクを入れ、適度に切ったホヤを入れて炒めます。

ホヤに火が通ったら、あらかじめ切っておいたトマトに合わせ、白ワインビネガーを入れて冷まします。
白ワインビネガーがすっぱい系の場合は、ホヤをフライパンからあげる直前に回し入れ、すっぽさを飛ばしておくとたぶん他素材との馴染みがいいと思います。

一晩ほど冷蔵庫で寝かせて味を馴染ませます。

作る直前に辛み大根をおろします。
そこに、薄口醤油で作った薄出汁を入れ、ほんのりお出汁を感じるくらいで馴染ませておきます。
出汁の塩梅はお好みで。

ホヤとトマトの具から出た汁をボウルに入れ、塩加減を調整し、茹でた蕎麦を入れて和えます。
おろしの塩梅次第ですが、塩気のないお蕎麦と合わせるので、濃いかな?くらいで大丈夫です。
最終的に全て合わせて、塩分0.8%前後を目指します。

あとは、蕎麦、おろし、具を盛り、大葉と黒胡椒を振ったら完成です。

 
ホヤの甘み、トマトの酸味、蕎麦の香りと旨みを、
お出汁が効いた辛み大根が調和させ、
大葉の爽やかな風と、黒胡椒のピリリ感が、
さらなる高みへと誘ってくれる。

旨い。

手打ちをこんなことしてしまっていいのだろうか…
という、背徳感のようなものを感じていたけれど、
そんな迷いが一気に打ち消される、そんなひと皿。

とにかく、この高山製粉のお粉はとても美味しいので、
これだけの仕事を汚したくないという思いから
ざる蕎麦一択で考えてきたけれど、
これは汚すという行為ではなく、
乾麺では絶対に味わえない、手打ちだからこそ叶う味の追求だ!
いうことがわかりました。

都合よく考えているだけだって?
ど…ドンマイッ♡(^^;)
 

いや〜、それにしても美味しいので、
少しざる蕎麦から距離を置いて、
「蕎麦を活かして味わう冷製蕎麦」
の開拓をしてみようかな。

 

新たな楽しみができたところで、
ごちそうさまでした!

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