「え、自分で打ってるの?」
お蕎麦を打つ話しをすると、
だいたい驚きの反応とともに褒めてもらえるので、
ちょっと嬉しいんですよね。
かつてはお蕎麦を打つのって
すごくハードルが高いことだと思っていたんです。
その日の湿度に合わせて水量を決めるだとか、
素人が打つと、切れ切れになってしまうだとか、
そば道場だとか、そば道だとか。
なんだかすごい師匠みたいな人に教えてもらって
なにやらすごい技術を身に付けないと打てないもの、みたいな。
かといってモグラなわたしは、そば道場に通う根性はなく
「オッサンが打てるんだから、わたしだって打てる気がする」
(オッサンに失礼すぎですね;;
そう、そんな若気の行ったり来たりな気持ちで
キッチンに向かったのが始まりです。
でも実は!
ふと思い出したのですが、小学校4年生のときでしょうか。
パジャマで学校にくる、当時42歳だった担任の先生が、
クラスで持つ畑で何を育てるか?という話しになったときに、
蕎麦を育てようと、提案してきたんです。
で、わたしたちせっせと畑にソバの種をまいて、ソバを育てて、
ソバの実を収穫して、足でふみふみする脱穀機を使って脱穀して、
フルイに扇風機をあててゴミを取り除いて、
石臼を手で回して挽いて、そば粉を作って、
先生が行きつけだったお蕎麦屋さんに行って蕎麦打ち見学をして、
自分たちで育てて挽いたそば粉を使って、お蕎麦を打ったんです。
(ふと思うに、そば殻ごと挽いたから、玄ソバの石臼挽きですね!
調理室にある、ボウル、まな板、短いのし棒、三徳包丁で作れたのは、
ミミズみたいな長さで太さの、ゴムゴムしたお蕎麦。
ある意味、トラウマになるくらいスゴいお蕎麦ができあがりました。
なかなかユニークな先生でしたけど、
「お蕎麦を打ってみようかな」
と思った背景には、この種から蕎麦切りを作った経験があったからで、
お蕎麦のクダリだけで言えば、最高の先生だったな!とw
そんなこんな、
ある日突然、衝動に駆られて
若気の行ったり来たりな気持ちで1Kのキッチンに向かい、
小学校以来初めて打ったお蕎麦です。
道具は、
家にある、ボウルとまな板とラップと牛刀。

写真がヘタクソすぎですね。
F4.0 SS1/60 ISO10000(汗汗汗
AUTOだったんでしょうか。
初めての一眼、EOS6Dを手に入れたばかりの頃で、
スピードライトも三脚もなく、明かりもない部屋だったのですが、
それにしても、ひどいですw
写真のひどさは置いておいて、
このとき打ったお蕎麦が、そこそこうまく行ったのがきっかけで
そば打ちにハマってしまったんです。
蕎麦打ち名人でもなく、認定を持っているわけでもなく、
蕎麦打ち教室や蕎麦打ち道場に行ったこともないのに
大きな声で言うのは憚られますが…、
そば打ちは、巷で囁かれるほど難しいことはなくて、
麺状のものを作るのであれば、誰でもできます!
パンやお菓子を作るのに、
いきなり売り物にできるくらいのハイクオリティを求める方って
どれだけいるでしょう。
きっと、同じことです。
何も、人に出して売るわけではないですから、
お蕎麦を打ってみたい!
という気持ちがあれば、十分打てると思います♪
<手打ちのメリット>
「いいそば粉」でお蕎麦が打てる=失敗しても美味しい
お店の場合、利益を出すことが目的なのでそば粉の原価に左右されがちですが、
手打ちだと、自分が思うようにそば粉に投資ができます。
そして、ポテンシャルの高いそば粉は、どんな打ち方をしても美味しいので、
お店で食べるよりも美味しいかも?しれません。
自分好みの蕎麦の楽しみができる
お店にいくと、お店のものしか頂けませんが、
自分で作れたら、自分の思うお蕎麦を、思う存分楽しめます。
これこそが、手作りの醍醐味!
お蕎麦が打てると自慢できる
まったくもってつまらないことですが、
こんなに簡単なのに、「そば打ちが好きだ」と言うだけで
「すごい!」と感心してもらえるのは、とてもお手軽だと思います。
褒められるのは、自分を激励できるいいスパイス♪
<手打ちのデメリット>
打つと食べるタスクが生まれる
毎回わたしがぶつかる壁。
作りたい!と思って作るものの、あれやこれや試行錯誤しているうちに10人前!
誰が食べるの…?
そんなときのために、蕎麦好きを探しておこう。
そば打ちから抜け出せなくなる
うまく打てた!
と思っても、100%の出来か?といえばそうではない。
もっと美味しくできるはず!
そう思い始めたら、終わりのないズブズブのそば打ちが始まります。
一緒にがんばりましょう!
これら、メリット、デメリットを踏まえたうえで
家にある道具で打ってみよう〜!
<家にある道具でそば打ち>
・大きめのボウル
・大きめのまな板
・ラップ(あればのし棒、麺棒)
・包丁、できれば牛刀などの刃渡りが長いもの
・ふるい(なければ普通のザル)
・注ぎ口がある計量カップ
・はかり

<二八蕎麦の材料(1人前)>
・そば粉 80g
・つなぎ粉 20g
・水 そば粉の加水率にしたがう
書いていない場合は45%前後(そば粉+つなぎ粉100gに対して45g前後)
・打ち粉 適量

まずは、1人前から打ってみるのがおすすめです。
そして、いきなり十割を打ちたいところですが、少し我慢。
そば粉8割、つなぎ粉(中力粉)2割でうまく打てたら、十割に挑戦します。
初めてのそば粉は、
「初心者」とか「打ちやすい」「つながりやすい」
と、書かれているものがいいと思います。
「玄挽」「粗挽き」「田舎粉」と書かれているものは
少し難しいそば粉なので、
打ちやすいそば粉に慣れてからがおすすめですb
そば粉を買うついでに、
「つなぎ粉」と「打ち粉」もぜひぜひ用意してください。
もし1回でそば打ちに飽きてしまったら、
つなぎ粉(中力粉)は、パンやお菓子作りに使えますし、
打ち粉はそば粉なので、ガレットやパン、お菓子作りに使えますb
そば粉の保存ですが、
特にこだわらなければ、虫がつかないかぎり常温でOKです。
気になるようでしたら、冷蔵庫で。
半年以上使わないようでしたら、自然にリリース、でしょうか(笑
ひとつ、
保管場所の「におい」には気をつけてください。
粉物で臭いを吸収するので、家の臭いなどが付きます。
以前、タバコと柔軟剤の香りのする手打ち蕎麦を戴いたことがあり、
保管には気をつけなくちゃいけないな、と思いました。
いざ、実践!
ふるいを入れたボウルをはかりに乗せ(ふるい+ボウルで0gにする)、
そこに、そば粉80gとつなぎ粉20gをはかり入れ、ふるいます。
合わせてお粉100g、これがいわゆる「二八蕎麦」になります。
元は、割合ではなく「二八(は十六文の)蕎麦」という、
当時の屋台のかけそばの価格から、そう呼ばれたようです。

お粉の準備ができたら、お水を計ります。
そば粉の種類によってまちまちですが、
今回は45%(お粉100gの場合、45g)のお水を用意します。
お蕎麦の場合、1g違うだけで状態が変わるので、
ccで計量せず、グラムで計量してください。

・ふるいにかけたそば粉
・軽量した水
ここまで揃ったら、打っていきます!

素手で作るものなので、まずは、タワシを使って、爪や手首までしっかりと手洗いします。
ふるったお粉を手でかき混ぜて、そば粉とつなぎ粉をなじませます。
ボウルの下には、折りたたんだ濡布巾を敷いておくと、安定します。
お水を入れてから打ち終わるまでは、時間との勝負なので、
最初にイメージを。
そば粉に含まれているタンパク質は、
小麦粉とは違い、捏ねてもグルテン(弾力のある成分)を形成しないため、
そば粉の粒子、1粒1粒に水を浸透させ、
お互いにくっつかせてあげるイメージです。
一気にまとめようとしたり、
逆に時間をかけすぎると水気のバランスが崩れてしまうので、
一連の流れを頭に入れながら作業を進めます。
では、いってみましょう!

①「水回し1回目」
薄く広めにそば粉を均したら、「半量の水」を細く長く、のの字を書くように水をまわし入れます。
このため、注ぎ口がついている計量カップがおすすめです。

手を熊手の形に固定し、指先を立て、少しづつ水に馴染ませるようにしながら、ササササっと攪拌します。
決して、捏ねたりしません。
初めは水を含んだ塊ができますが、攪拌しているうちに乾いたお粉と馴染み、ほぐれていきます。
(全体に水が馴染んでいきます。

指にまとわりついたものは、早いうちに指から取り、ボウルの中のお粉と馴染ませます。



②水回し2回目
サラサラと砂のようになったら、残っているお水の9割ほどを回し入れ、また攪拌します。
今回は45g用意しているので、2、3g残るようにします。
1回目と同じように塊ができますが、混ぜている間にほぐれ、全体が均一になっていきます。

1回目に馴染んで砂のようになったときとは違い、おからのようにボソボソっとしてきます。
ここまでで加水率43%ほど。
あと少しのお水で一気に「くっつきたい!」と言い始めます。
そば粉によっては、ここでくっつき始めるものもあります。

③水回し3回目
残りの2、3gのお水を回し入れると、おから状態のソバが、一気にくっつき始め、ゴロゴロっとまとまり始めます。
ここまできたら、指を猫の手のようにし、上から少し抑えるように撫でながら、かき混ぜ、優しく塊になるのを促します。
一気にまとめようとはしません。
大きなこね鉢を使う場合は、指を広げて手のひらを使います。

スクランブルエッグの塊みたいになってきたら
ゴロゴロまわしながら、より大きな粒の塊にし、ひとまとめにします。
ここまでで、およそ10分です。

④本練り
ひとまとめになったら、
生地を寄せては手の付け根で押し込み、土をこねるように、つやがでるまでテンポ良く20〜30回ほど練ります。

⑤菊練り
つやがでたら、菊練りをします。
小さいのでやり辛いですが、外から中央へ練り込んでいきます。
写真は見やすく木の上でおこなっていますが、木が水分を取ってしまい蕎麦が風邪をひいてしまう?ので、ボウルやこね鉢を使った方がいいです。

⑥ヘソ出し
蕎麦の表面が滑らかになってきたら、できた花びらを中央に寄せ、空気を出すようにしながら、突出させ(ヘソ出し)、穴を閉じて、とじ目を下にして滑らかにしたら、蕎麦玉の完成です♪
ここでシワが残っていると、延したときのヒビ割れの原因になるので、滑らかな肌に仕上げます。
量が少ないので手で成形していますが、ボウルやこね鉢などの底を使っておこないます。
「土を捏ねるように」とか「菊練り」「ヘソ出し」と言って分からない場合は、
ボソボソとしていた生地が、しっとり滑らかになるまで思うように捏ねて、
ボウルの肌を使ってシワを取るだけでOKですb

ツヤっとして、綺麗です♪
ここから、延して切っていきます!

⑦延し
まな板に打ち粉をし、
蕎麦玉を乗せたら、蕎麦玉にも打ち粉をします。

手の平で、まな板に対して垂直に押しながら軽く広げます。
一気に延すとひび割れができてしまうので、徐々に延すためにおこなう作業です。
(たぶん

麺棒を模したラップで、なるべく四角く伸ばしていきます。
いろいろ方法はありますが、均一に延せたらOKです。

今回は、一般的な太さを目指して延します。
1人前100gのお粉の場合、
面積が750㎡になるようにします。
包丁の刃渡りが24cm弱なので麺の長さを20cmとすると、
750÷縦20×2(折る)=横約19cm
よって、縦40cm、横19cmの長方形にします。
(わたしの親指から小指がちょうど20cm)
持っている包丁の刃渡りから、算出してください。
たとえば、刃渡り20cmの包丁、麺の長さを18cmにする場合は、縦36cm(折る)、横21cmとなります。

⑧蕎麦切り
この厚さ(およそ1.6mm)の場合、
3cm(一寸)を23本(1.3〜1.4mm)に切るのが、「きりべら23」という江戸前での一般的な太さとなるようです。
あまり太いとすするのも噛むのも大変ですから、できる限りで大丈夫です、指を切り落とさないよう、なるべく細く切っていきます。

みっともない見た目ですが(笑)、
こんな感じに切れました。
麺切り包丁や、コマ板といった道具を使うと、定規を使ったように綺麗に切れます。

これをまとめ、

打ち粉を振って払い、

ラップなどに包んで保存しておきます。
手で打っているので、保存は冷蔵庫で2、3日くらいでしょうか。
ここまできたら、食べたいですよね!
茹でていきましょう。

⑧茹で
茹でる前に、
★ボウルに濯ぐための水
★ボウルに〆るための氷水
を、用意しておきます。

たっぷりのお湯(1人前2Lほど)を用意し、沸いた湯に、蕎麦をパラパラと回し入れ、お箸で下から優しくかきあげるように、まぜます。
あとは、湯の対流に蕎麦が泳ぐのを任せます。

蕎麦を入れて穏やかになった湯が、
ふわ〜っと沸いてきたところで、麺が踊る程度に火を弱め、1分ほどしたらザルにあげます。
差水をする場合もあるようですが、薪の時代とは違い火加減が容易にできるので、差水はしていません。

⑨すすぎ
茹で揚げ、水にさらしたら、濁りがなくなるまで4、5回ほど水を換えつつ揉み洗いをして、蕎麦についたヌメリを落とします。

⑩締め
ここでしっかりゆすぐことで、シャッキリとした口当たりの蕎麦に仕上がります。
最後、氷水にさらして締め、
お皿に盛ったら、できあがりです♪

初めて打って、この姿が見られたら
とても感動すると思います!
いざ、実食!
感動は後回しに、
ここまでできたら、なるべく早くすすり込みましょう!
今日は、江戸時代の食べ方にのっとって、
山葵ではなくお大根(辛み大根)を用意しました。

ゾゾゾゾゾゾーッ、ゾッゾッ!!
ンン〜〜〜〜〜〜♡
蕎麦の香りが鼻を抜けていき、
まさに「感無量」な時間。

おいしい〜〜〜♡♡
自分で打つから、また格別なんです♪
さて、
木っ端微塵になってしまった場合です。
およそ、粗挽粉や田舎粉ではない限り、
木っ端微塵になることはまずないと思いますが、
万が一、もし、茹でたときにコッパになってもご心配なく。
これはこれで美味しい食べ方があります!

こんなふうに、かけ蕎麦のように蕎麦つゆをかけ、
好きなお薬味をいろいろ、たくさん乗せて、スプーンを使って頂くと、
あえて蕎麦を細切れに作ったような「そういうお料理」になります。
これはこれで、綺麗ですよね!

そば粉自体が美味しいですから
どんな結果になっても、少しの工夫で美味しく頂けます♪
安心してください。
最初に揃えたい道具
もちろん、一気に道具を揃えられたらイチバンいいのですが、
続くかどうかわからないものに投資をするのも気がひけるもの。
そこで、2、3回、自分の家にある道具で打ってみて
次も打ちたいぞ!と思うようでしたら、
美味しさの第一歩は、麺を均一に断ち切ることだと思うので、
・蕎麦包丁
・駒板(こまいた)
この2つは揃えたいところです。
わたしは、左利きだったり、のし板の大きさの関係で、
ひとつづつ道具を揃えていきましたが、
分からない場合は、セットを買ってみてもいいのかも?しれません。
包丁があまりよくない、といった話を聞きますが、
試し打ちしたい方のためや、
急しのぎに購入したステンレス製の安価な蕎麦包丁がありますが、
使っていて困ったことは、いまのところありません。
参考までに、わたしの持っている蕎麦セットです。
自己流で揃えているので、プロがみたら笑えてしまうかもしれませんが、
十分、楽しんで打てています♪

もっと美味しいお蕎麦が食べたい!
美味しいお蕎麦の定義は、人それぞれだと思うので難しいのですが、
香り、風味が好きな場合は、
「玄ソバの粗挽き」「田舎粉」といったもの、
甘み、旨味が好きな場合は、
「挽きぐるみ」「抜き実」といったものがオススメかも?しれません。
また、品種改良種が多く出回っていますが、
その土地でずっと育ってきた「在来種」という種類のソバは
力強いものが多いので、この辺りを探してみるのもいいかもしれません。
わたしは、各地の在来種を試しながら、
地元長野県産の在来種を探しているところです。
好みに合ったそば粉が、見つかるといいですね!
駆け足でお見せしてきましたが、
お蕎麦を打つのはとても簡単です。
ぜひぜひ失敗を恐れず、
手打ち蕎麦に挑戦して、一緒に美味しいお蕎麦を食べましょう!
ゾゾゾゾゾゾーッ、ゾッ…!
ごちそうさまでした!